七夕前は、どこの幼稚園も笹飾りが華やかで、
なかなかに楽しかった。
普段は蚊の温床として煙たがられる竹やぶも、
このときばかりは笑顔の人たちを迎え入れ、
先生たちは近くの藪から、
「おっちらせ、こっちらせ」
と竹を運んでくる。
中には張り切りすぎて、どう考えてもでかすぎる場合もあるが、
こういう幼稚園はたいてい園長先生が体育会系なのである。
T幼稚園は、特に七夕を一学期のメインイベントとしているので、
華やかさがスゴイ。これほどまでの七夕飾り!と誰もが驚く代物は、
保護者会の協力なくしては語れない。
以前、そんな力を込めた七夕の行事が始まった途端に雨が降り、
イベントが台無しになったことがあるらしく、みなが悲観にくれた。
園長は、二度のそんな思いをみんなにさせたくないと、
後年、園庭全体に、開閉式のドームをつけた。
今のところ、あんな思い切ったものは、他で見たことがない。
短冊のお願いは、そのときどきの子供の興味を反映するので、
見ていると意外とおもしろい。
卒園アルバムなんかもそうで、以前なら、
「野球選手になりたい」
「巨人に入りたい」
が男の子の一番人気だったのに、いまやすっかり見る影もない。
かわりはもちろん、「Jリーグ」「サッカー選手」がつとめている。
今年の短冊で多かったのは、
「シャイニングルミナスになれますように」
というもの。ほかに
「キュアホワイトになれますように」
というのも多かった。
何のことやらさっぱりわからないので、
帰って、まだ歳が園児に近い橋本に聞くと
「あー、リンスの名前っすよ」
という。
どう考えてもそんなはずはないので、
橋本も、どうやら子供心は忘れてしまったらしい。
調べてみるとこれらは「ふたりはプリキュアMAX HEART」というアニメの
キャラクターらしく、正確には「シャイニールミナス」。
仮面ライダーもウルトラマンも、もはやM78星雲に帰ってしまい、
園児の心には住み着いていないようだ。
ほかに、
「けっこんできますように」
という年少さん(3歳児)の短冊。
晩婚の時世を3歳児にして理解した、秀作。
「電車の運転手になりたい」
という短冊も。
正義感の強い子なのだろう。
さらには、
「電車になりたい」
という短冊。
正義感を超えた、もはやファンタジーな願いのこの子に、
ボクは今年の短冊大賞をあげることに決めた。