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団遊日記

「アウトバス(2005/10/4)」

この間、神戸に行きました。
一緒に仕事をしているセキユリヲが、
神戸で講演に呼ばれたので、せっかくだから、ということで、
ほかの仕事をひっつけて見に行ったわけです。

個人的には、まだ若かりし頃にお世話になった
神戸学校を主宰するフェリシモの矢崎社長に「その節は…」と
ご挨拶したいな、というキモチもありました。

セキには、上原という女の子がアシスタントとしてついていきます。
ボクは、南木というスタッフを連れて、行きました。
向こうはご招待ですから、新幹線もグリーン。
こちらはエコノミーです。

新神戸の駅に着いたら、向こうはお迎えの車が到着。
こちらは地下鉄でへいこらさっさ。

宿泊地は、向こうはかの有名な『ホテルオークラ』。
こちらは……、なんと予約もせずに行ってしまったので、
一から探さなければなりませんでした。
そして、悲劇はここから生まれたのです。

さて。
三宮駅。
ぱんぱかぱーんと到着したふたりは、

「まずは宿だわな」

ということで、そのあたりのビジネスホテルを訪ねました。
ところが、まだ昼間だというのに、どのビジホも満室。
三連休、ということをわずかに甘く見ていました。

仕方がないので、歩きつかれてトボトボと観光センターへ。
「ここなら、なんとかなるでしょう」
というJTBさんの力強いアドバイスを頼りに、

「すみません、今日なんですけれども……」

と尋ねてみました。
すると「大丈夫ですよ」と強気のおばちゃんが返事をくれました。

しかし。
問題は泊まる施設のランクなわけで、おばちゃんによると、
3軒空きがあると言います。
まず、一番安いのは、一人5,000円のビジネスホテル。
最初に金額提示を受けましたが、いくら神戸とはいえ
5,000円となると、これは相当なもんですぜ、と判断し、
二番目のホテルをオファーすると、
こちらはふたりで25,000円だと教えられました。

「ただし、ツインです」とおばちゃん。

ツインかあー!ともんどりうちながら、
流し目で何度確認しても、この長髪を後ろで束ねる
南木との一夜はありえません。
そんなことなら野宿の方がましだわ。ということで、
思い切って一番高いホテルをオファーすることにしました。

すると。
「ホテルオークラで、40,000円ですね、おひとりさま」
と、笑顔でおばちゃん。

「ホテルオークラといえば……」

ここで、正直、上原の顔が浮かんだことは、否定できません。
器が小さいとののしられようが、浮かんだものは浮かんだのです。
うらやましいぞ、上原!

しかし、ここでイキオイに任せて
「じゃあ、オークラで!」と言ってしまうボクではありません。
冷静に、沈着に、流し目で南木の表情を確認しながら、力強く、

「5,000円で、お願いします」

と言いました。 横で南木も力強くうなづいています。
思えば「ユッケ事件」から大きく成長したものです。

するとおばちゃんが、
「こちらはアウトバスですがよろしいですか?」
と聞いてきます。

「アウトバス……?」
なんだか新規のサービスのようにも聞こえます。
南木と顔を見合わせ考えました。

そしてわかったことは。
「風呂なしかい!」
という事実。

しかし、迷っている場合ではないので、
わかりました、とふたつ返事でOKをしました。
まあ、部屋がシングルであれば、いいのです。
ツインで長髪にからまって眠るよりは、マシなのです。

そして、すぐに地図をもらって、荷物を置きに宿に移動しました。
見た目はなんだかなーな場所でしたが、
そろそろ遺書を書き始めようかというおじいさんが、
とびきりの笑顔で迎えてくれました。
とびきりの笑顔すぎて、ほとんど目玉が見えません。
しかし、この後、部屋に案内されたボクと南木は
さらに衝撃の体験をするのです。

部屋は二階があてがわれていました。
ボクは松の間、南木は竹の間。
おじいさんは鍵を二本持つと、
アウトバスの位置を的確に教えてくれました。

そして、
「どちらさんが竹かのお?」
と聞かれ、それぞれ鍵を受け取ると、
「向かって左が松、右が竹ですじゃ」
との声を残し、コツコツと階段を下りていきました。

「それじゃあ、10分後に」

南木に声をかけ、ふたりはそれぞれの入り口から中に入りました。 すると……
なんとびっくり、
中はつながっているではありませんか。
かろうじてふすまが一枚はありますが、
「旅館間取り法」に照らし合わせると、
これはきっと同室に違いありません。
しかも、ゆるーいふすまが一枚あるだけのために、

「南木め、ファスナーをあけ損ねてちょっと噛んだな」

などと、かえってリアルに絵が頭に浮かんで落ち着かないのです。
恐るべし5,000円。
しかし、いまさら文句も言えず……
この夜、二人はそれぞれ、最大限息を潜めて生活をしました。
自分たちが努力をすれば、シングルルームな気分は味わえる、
そんな神戸の夜。
恐るべし5,000円。
恐るべしアウトバス。
そして、恐るべしホテルオークラ。
神戸の三連休には、注意しましょう。