チイキ

視野の広い「編集」で、
地域の成長まで見すえる

スタンス 地域活性は“編集”という
仕事のひとつ

アソブロックが「チイキ」の仕事で主軸にしているのは、持続可能な“地域活性”だ。武器は、担当者それぞれの“編集”思考と、地域の人々との密接なコミュニケーション。近年、各業界から市場としても熱い眼差しを向けられているローカルで、アソブロックは何を生み出しているのか。まずは、地域の仕事をはじめた経緯を聞いた。

団:僕は編集者として仕事をずっと楽しんでいくためには、編集の中身や領域を広げていかないとしんどいな、とどこかで思っていて……フィールドを広げていくうちのひとつに「地域」がありました。地域にたくさんあるコンテンツをどうやって“編集”していくのか、という考え方は、これまでと一緒。一冊の雑誌をつくるようにコンセプトをつくり、うまく整えれば、きっと魅力的にリブートできると感じました。

南木:僕は大学で都市計画や街づくりの勉強をしていて、そういうことにもともと興味があったんです。それから編集者として社会に出て、転職でアソブロックに入るとき、団さんに「何がやりたいねん」と聞かれた。で、僕は「村をつくりたいんですよ」と答えたんですよね。それが15年くらい前のこと。団さんはそのとき、意味わからんけどおもろいな、くらいにしか思わなかったみたいですけど(笑)僕はクソ真面目に考えてたんです。

だけど当時は、村をつくるのに必要な要素とか、具体的な取り組み方がわからない。というか、新しい仕事に必死でついていこうとしている時期でもあったから、アソブロックがよく言っている「世の中の課題を解決する」みたいな姿勢にリンクさせる気持ちの余裕もまったくなくて……。単純に、自分の理想の居場所がほしいという感じで答えたものでした。でも、団さんも言ったように“編集”という仕事を広く定義し直していくなかで、だんだん自分が地域や村に関わる具体的なイメージが湧いてきたんです。特に、『暮らしのお店』をはじめとして、アソブロックのなかで案件を通じたケーススタディができたのは大きかったですね。

ケース1 “自分ごと”の姿勢が詰まった
『パラダイスカフェ』

“編集”思考が光るアソブロックのアイディアは、さまざまな事例を生んだ。そのうちのひとつ、和歌山県の中辺路町温川にある『パラダイスカフェ』は、限界集落における“自立”を目指すために生まれたカフェだ。クリエイティブカンパニーである株式会社ホワイトスペースが運営しており、アソブロックからは南木が参加した。

南木:温川プロジェクトの目的は、経済・エネルギー・人材などの観点で「集落が自立する」ことでした。そのために、まずはさまざまな人を巻き込みながら地域活性していく“姿勢”からつくることにしたんです。その姿勢を体現し、発信していくコミュニティスペースとして、ホワイトスペースではカフェの運営を始めました。はじめは地域の方々が、その後は県外からも人が訪ねてくださるようになり、温川について話す機会も自然と増えて……その関係性が、さまざまな「自立のための展開」につながっていってるのだと思います。僕は東京からの限定的な関わり方でしたが、積極的に意見は出させてもらい、当事者意識を持って取り組んだつもりです。

団:このプロジェクトの肝は、ホワイトスペースが温川に本社を移転したこと。よそ者ではなく、言ってしまえば“うち者”としてやっていく覚悟を、目に見えるかたちで実行されたんです。それって、本当にすごいことだと思うんですよね。

南木:ローカルに外部からコンサルタントがやってきて一時的に地域を盛り上げるけれど、たいてい一過性に終わってしまうという事例もあります。

団:「あぁ、数年前に終わったフェスの町ね」みたいに、何も終わってないのに勝手に終わったことにされるほど、地元の人を落胆させることってない。

稲垣:私も学生のころは、そういう「地元のフェス」みたいに派手な事例に惹かれていました。でも新卒でアソブロックに入り、団さんのアシスタントとして地域と関わるうちに、本当に必要な“地域活性”が見えてきて……。関わる人たちが本当にその場所をよくしようと考えていて、継続的に取り組めるプロジェクトこそが、本質的だと思うようになりました。パラダイスカフェのお話は、私にとって、地域活性を考える上でのロールモデルです。

南木:温川では、カフェ以外にも印象的だった企画があります。自分たちで山や川を歩き回り、村の一番いい散歩ルートを探してまとめた「お散歩マップ」です。しばらくあとで役場から「この散歩道を公式に整備したい」というお声をいただき、予算もつきました。

団:地域活性の仕事は、ロケーションや会場などの“箱”を用意すれば、人や企画が集まったりします。でも、自分たちが主体性を持って取り組まなければ、せっかくの箱も機能しません。南木は最終的に、ホワイトスペースに役員として招かれました。パートナーとして、温川を“自分ごと”にして取り組んだからこそのオファーだと思います。それくらい、彼は本気だったんですよね。

南木:コンセプトには心から同意していたけれど「役員としての責任を果たせるのか」「アソブロックでの仕事との両立はどうするのか」という懸念から、当初はお断りしたんです。でも、アソブロックに入ってから「編集」を「地方・地域」とつなげてみたいと考えていた僕にとって、このプロジェクトは自分の大きなモチベーションにもなっていました。なので、最後は僕も根負けして、お受けすることにしたんです。

ケース2 地元民の誇りとして、
愛され続ける『暮らしのお店』

愛知県安城市にある安水建設は、地域トップの建設会社として成長してきた。しかし、一方でこのままではいけないという思いもあった。そこで彼らは遊休地を活用するアイディアを探しはじめ、パートナーとして、アソブロックと大阪の企画会社の連合チームに声をかけた。

団:建設会社や工務店は、見込み客を集めるためにモデルハウスを建てるもの。だけど、消費者はその後の執拗な営業を恐れ、モデルハウスに足を運ばなくなっています。そこで僕たちが考えたのは、一軒家にレストランと雑貨屋とパン屋さんが入ったモデルハウス『暮らしのお店』です。地元農家の野菜が食べられるレストランだったり、大阪から有名なパン屋さんを呼んだりと、地域の方々の誇りになるような場所づくりを心がけました。モデルハウスに行くのではなく、気付いたらモデルハウスに来ていた、という形にしませんか?という提案です。

いまでは地域活性化の事例として、業界紙にも取り上げられているけれど、提案当時の周囲の反応は必ずしもポジティブではありませんでした。社内では「それじゃ成約に結びつかない」とか、融資をされる金融機関では「東京から来た変なやつにだまされてるんじゃないですか?」とか(笑)。でもその局面で、代表の水野さんは「この提案を信じてみたい。これをすることで、安城がもっといい街になる」と言ってくださいました。長期的な視座が必要になってくる地域活性は、そういった大義を経営層とコミットしておくことが大事。もちろん、地域の方々にも理解してもらえるよう、丁寧にプロセスを踏むこともすごく大切です。

稲垣:じつは就活中、地域活性について調べているときに『暮らしのお店』を知り、「こんなにも地元の人に愛されて、長く継続しているプロジェクトがあるんだ!」と感動して、アソブロックに興味を持ったんですよね、私。

南木:地域の方々が主体性を持って、持続的に取り組んでいらっしゃる姿をこの目で見ることは、「チイキ」のプロジェクトの醍醐味ですね。以前は団も現地によく足を運んでいたけれど、いまはあまり行く必要がないくらい、地域の方々が自分たちの手でお店を動かしています。『暮らしのお店』はフォーマット化して全国展開することもできるし、数ある事例のなかでも、とくにエポックメイキングな事業ですよね。

ビジョン その人を伸ばす“宿題”を考える

持続可能な仕組みにすることで、地域の成長まで促す「チイキ」の仕事。それは“アソブロックらしさ”の根幹を体現している。

団:アソブロックが「チイキ」の仕事をする前提のひとつに、「地域の方の成長機会を担保すること」があります。ただし、その機会はそれぞれの人の立場でとらえないと、単に「都会的なスキルセット」の押しつけになってしまう。たとえばレストランの店長なら、どんなことが好きで、どんなことにやりがいを感じるかをまずお聞きします。そこをおろそかにすると「将来、自分の店を持ちたいはず」「数字をあげたいはず」というような、こちらの勝手な思い込みで道をつくってしまう。ご本人が本当にやりたい方向の“宿題”を出すのが、僕の役目かなと思っています。

稲垣:団さんは“宿題”を提示するのがとても巧い! 現地スタッフたちへのマネジメントなどを見ていると、それぞれの得意分野ややりがいに感じることを瞬時に見抜き、それを活かせるような課題に変えて、その方々にお渡ししているのが分かります。

南木:アソブロックでは「成長すること」がテーマになっているけれど、じつは昔からそうだったわけではありません。いまとなっては信じられないと思いますが、一時は上場を目指したり、朝から社訓を読みあげていたこともあった(笑)。でも、あるときにものづくりと真摯に向き合い、個々のスキルを上げるべく、「成長」をテーマに掲げたんです。そこに標準を置くようになってから、アソブロックが大きく面白くドライブしていった、という実感がありますね。

団:「チイキ」に限らず、アソブロックにおける仕事とは、自分たちもリスクを取って、お客さまと一緒に課題に取り組んでいくことです。それがいちばんアウトプットのクオリティを高め、自分たちの成長にもつながります。反対に言えば、自分たちもやりたいことを見つけないと、リスクは取れない。創業から試行錯誤して、いまようやく、そんな「アソブロックの在り方」にたどり着いたんです。

チイキのプロジェクト紹介

  • KAN,MA〈カンマ〉

    家にいるような居心地の良さを感じられるカフェを中心に複数の住宅(家)が集合。くらしや住まいについての相談や体験施設もある新たなまちづくりの拠点です。

  • 暮らしのお店

    モデルハウスの新しい形を模索する中で生まれたプロジェクト。自然に人が集う場を作り、結果的に場が展示場を兼ねる、という逆転の発想で生まれた

  • かけはしおくるみ

    被災地に新しく生まれる命に対し、エールを込めておくるみを贈るプロジェクト。作る過程、贈る過程に多くの人を巻き込むことで、人の輪作りを目指している。

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