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第77回 5月10日(土)
会場:日本教育会館(神保町)




通算77回目の家族理解ワークショップ(東京開催)は、14名の方にご参加いただきました(初参加の方が3名)。講師の新刊【家族理解の教科書graphics】発刊直後とあり、終了後には即席のサイン会も開催されました。その様子をレポートします。

【オープニングトーク】

オープニングトークでは、特に初参加の方がスムーズに場に馴染めるように、このワークショップで目指していることなどが講師の最近の興味・関心事に絡めながら話されます。

今回は、「私(講師)が考える“家族の面白さ”について」と題したお話。講師は数年前に妻を亡くして一人暮らしですが「毎日が大変気楽だ」と言います。一方で家族は「大変メンドクサイ」ものだとも。ただ、その中にこそ面白さがあるのだと言います。

面白がるために大切なことは「課題や問題が何も起こらない家族を目指さない」こと。そもそも、そのような目標は達成不可能なものなのですが、人はどうしても、そういう目標を持ちたがってしまうと言います。その結果「なんで我が家族にこんなことが!」と嘆くのだと。目指すべきは「何があってもなんとかできる」家族になること。そのように課題や問題を扱える力を付けること。そうなれるための第一歩に家族理解があると説きました。

【セッション1】

セッション1は、「家族システム論の視点から事例を見る」がテーマ。
講師が描く漫画エッセー・木陰の物語から「居られない人」を見て、この家族に起きていることは何なのか?をペアで話し合いました。

「居られない人」は名古屋に住む4人家族の「中1息子」が不登校になったことの相談に、わざわざ京都まで夫婦で相談にきたものの、面談指定時間より早く到着したことで「待つ」ように言われたことに父親が腹を立て、結局相談を受けることなく父親だけが名古屋に帰ってしまう出来事を扱った話です。

果たしてこの家族で取り上げるべき問題は「中1息子の不登校」なのかどうか。家族システム論的に見立てると、来談者の主訴が必ずしも取り上げるべき問題と考えないケースもあります。これなどは、そのような可能性も検討すべき事例であり、ペアワークは大いに盛り上がりました。

講師はよく「何を問題と定義するかが解決や支援に向けた第一歩だ」と言います。また、その問題の「扱い方」にも注意を払うように繰り返します。「中1息子が学校に行かない」ということは事実ですが、その理由を昨今の不登校問題にあてはめて安易に考えるのは必ずしも賢い扱い方だとは限りません。巷て大流行している不登校を問題として扱っても、今はたいして意味がない、とも講師は言いました。

ちなみに、このワークショップには、児童に関わる人、高齢者に関わる人、医療関係者、学校の先生などあらゆる年代の「人に対してサービスを行う人(対人援助サービスと総称)」が参加されますが、そこで共通して役立つ考え方として学んでいるのが、「家族システムへの介入による解法」です。

「家族システムへの介入による解法」とは、問題とされる個人の内面に焦点を当てるのではなく、個人の持つ関係性、中でも家族という万人が共通で持つ関係性に焦点を当て問題解決を図ろうという考え方です。言い変えると「部分はいつも全体の中にある」と考え、全体(家族の関係性)に変化を与えることで部分(問題とされている事象)を解決に導こうとすることです。

【セッション2】

セッション2は恒例で「参加者の3分間トーク」を行います。

普段の人付き合いが、職場の同僚を中心にどうしても固定化してしまう傾向がある中で、同じヒューマンサービスの職に携わりながらも、対峙する相手や取り扱う問題がまったく違う人と輪になり「最近私の周りでは…」とお互いに報告し合います。今回は運営スタッフを含め5人グループに分かれて行いましたが、それはつまり、近接領域で今起こっているいくつもの話が同時に聞けるということです。

学校や病院や介護の現場、家庭や学生たちの間で起こっている問題。それぞれは個別的でも、同じ社会を構成する人に起こっている問題であることに変わりありません。そして、それぞれが本当にまったく無関係かというと、実はそうでもないことが多いのです。

幼稚園で起こっている問題が、形を変えて高齢者の現場で起こることがあります。保護観察所の中で起こっていることが、そのまま現代の家族に置き換えられる出来事だったりもします。それらを聞きながら、整理し、改めて自分の現場や家庭で役立ててもらおうというのが、このセッションの目的です。

3分の話を聞いた後は、それをネタに7分間、メンバーでディスカッションします。すると、そこで起きている問題や課題がより明確化したり、あるいはメンバーの意見を聞くことで、発表者が事実をこれまでと違う視点から見られるようになったりします。参加前は「この3分間トークが不安で…」とおっしゃる方も時々いらっしゃるのですが、実際にやってみると、なんてことはない職場や家庭での雑談を、普段とは違うメンバーで行う感じで楽しいのですよ。

【セッション3】

セッション3は、ジェノグラムを使った事例検討が行われました。
ジェノグラムとは家族関係を図示するものですが、このワークショップで繰り返し学ぶ技術です。この技術を学び・使い・経験を積み重ねることで、

・ジェノグラムを見て、家族関係のバランス・アンバランスを感じ取ることができる
・バランス、アンバランスから具体的な援助プランを考えることができる

というメリットがあります。対人援助職者が携わる多くの問題は、「家族」というステージの上で起きています。不登校も、DV問題も、離婚問題も、養育放棄も、介護問題も、その多くに共通するステージとして、家族があります。そのため、援助の第一歩はまずステージの状況を正しくアセスメントすること、つまり家族の構造を理解することです。

インタビューの際にポイントになるのが、「境界・サブシステム・パワー」という三つの要素およびその機能状況です。問題を抱える家族においては、それら三つのファクターの何かが「一般的ではない」ことが多く、アセスメントにおいてはそれを「家族の特徴」と見なします。そして、その特徴が問題とされる事項になんらかの影響を与えていることが多いのです。

例えば、本来であれば夫婦で話し合って決めるべきことを上世代が決めてしまっているようなケース。子どもが行く小学校を、跡取り問題に紐づけておじいちゃんが決めました、などは一般的ではありません(境界侵犯と見立てる)。それで上手く行っていれば何の問題もないのですが、仮にその経緯を踏まえて小学校に通っていた子どもが不登校になってしまったような場合は、不登校問題のように見えて、実はそうではないのかもしれません。

当事者にとっては「当たり前」になってしまっている「家族の特徴」を「一般的なそれ」に戻すことで家族というステージを整える。その結果、問題が解決に導かれることも案外多い。ざっくり言えば、これが「家族システムへの介入による解法」です。

今回は、74歳男性、86歳女性、56歳男性(離婚歴あり)の3人家族に起こった「問題とされる出来事」について検討しました。講師はいつも「正解を当てることが大事なのではなく、少ない情報の中でどれだけその周辺でありそうなことに想いを馳せることができるか? これが支援の質を左右する」と語ります。

そんなこんなで、あっという間の6時間。
今回も学びと笑いが絶えないワークショップでした。

次回v78は、8月9日土曜日に開催します。
レポート執筆時点では会場がまだ未定なのですが、決まり次第お知らせしますので、専門職の方から、お母さん・お父さんまで、次回もたくさんの方のご参加を、お待ちしています!

※文中に出てくるケースや実例の内容等は、実際の講義と一部変更している場合があります
※一部、参考画像を使用しています。実際の様子とは異なる可能性がございます。何卒ご了承くださいませ。

文責/団遊
【今回の参加者の職業・所属等(参加申込書より)】

スクールカウンセラー、幼稚園園長、専業主婦、看護師、保育士、臨時職員、児童支援員、公務員、児童養護施設職員、保護観察官、地方公務員、児相支援員、公務員福祉職

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