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第71回 11月18日(土)
会場:東京海洋大学 品川キャンパス 白鷹館




通算71回目の家族理解ワークショップ(東京開催)は、13名の方にご参加いただきました(初参加の方が7名)。その様子をレポートします。

【オープニングトーク】

オープニングトークでは、特に初参加の方がスムーズに場に馴染めるように、このワークショップで目指していることなどを、講師の最近の興味・関心事に絡めながら話があります。
今回は「記憶には癖がある」という話。当然のことですが、人はすべてのことを覚え切ることはできず、起こったことを「語る」ことで記憶として定着させていきますが、その語り方は人によって癖があるという話でした。
言い換えれば、語り方を変えれば記憶も変わるということ。専門的な言葉では「ナラティブ」と呼ぶようですが「起こったできごとの語り方を変えてみる」こと自体には、何の専門性も必要ありません。
このワークショップで学ぶことは、専門的なことではなく、家族の誰もが普通に持ち得る力についてであり、家族に関わる大概のことは、専門家になど頼らなくても、自分たちでなんとかできるということが話されました。

【セッション1】

セッション1は、講師が描く漫画エッセー、木陰の物語の中から「降ろして!」の作品をみんなで読むことから始まりました。
「降ろして!」の物語の背景に触れながら語られたのは、このワークショップで学ぶあらゆることの基礎となる、家族システム論についてでした。

ワークショップには、児童に関わる人、高齢者に関わる人、医療関係者、学校の先生などあらゆる年代の「人に対してサービスを行う人(対人援助サービスと総称)」が参加されますが、そこで共通して役立つ考え方として学んでいるのが、「家族システムへの介入による解法」です。

「家族システムへの介入による解法」とは、問題とされる個人の内面に焦点を当てるのではなく、個人の持つ関係性、中でも家族という万人が共通で持つ関係性に焦点を当て問題解決を図ろうという考え方です。言い変えると「部分はいつも全体の中にある」と考え、全体(家族の関係性)に変化を与えることで部分(問題とされている事象)を解決に導こうとすることです。

例えば不登校の問題解決を検討する際に、不登校児の心の在り様に焦点を当てるのではなく、不登校児の家族の関係性に焦点をあて、その関係性に変化や刺激を与えることで、結果的に不登校状態が続かない状況をつくっていこうとします。

講師は、繰り返しこう言います。

「大事なのは原因を究明することではなく、課題解決に向けた具体的な作戦を授けること。家族という集団には、解決に向かう力必ずあると信じること。専門細分化が進むと、援助者自身も全体を見る力が弱まり、結果的に問題解決力が弱まることがある。専門性は、家族理解(全体を見る力)の上にあるものに過ぎないと自制すること」。

今回は、上記に加えて、家族に起こることは必ず「誰かのもとに起こったこと」であることや、それが故に、家族に起こる大概のことは大ごとではなく、予測可能なことであることも語られました。

一例として、講師の妻が末期癌で倒れたときのことが話されましたが、その中で
「自分は医者ではないので、専門的な治療をすることはできない。ただ、長年連れ添ったパートナーとして、今妻が何をして欲しいと思っているかは、医者よりも分かるし、それならできると思えることが多かった」
「家族に何かが起きたときに、相手がして欲しいことをすることは、ときに正しいことをする以上の力を持つことがある」
「それは家族だから分かることや、できることであることも多い」と結ばれました。

【セッション2】

セッション2は恒例で「参加者の3分間トーク」を行います。

普段の人付き合いが、職場の同僚を中心にどうしても固定化してしまう傾向がある中で、同じヒューマンサービスの職に携わりながらも、対峙する相手や取り扱う問題がまったく違う人と輪になり「最近私の周りでは…」とお互いに報告し合います。今回は運営スタッフを含め5人グループに分かれて行いましたが、それはつまり、近接領域で今起こっているいくつもの話が同時に聞けるということです。

学校や病院や介護の現場、家庭や学生たちの間で起こっている問題。それぞれは個別的でも、同じ社会を構成する人に起こっている問題であることに変わりありません。そして、それぞれが本当にまったく無関係かというと、実はそうでもないことが多いのです。

幼稚園で起こっている問題が、形を変えて高齢者の現場で起こることがあります。保護観察所の中で起こっていることが、そのまま現代の家族に置き換えられる出来事だったりもします。それらを聞きながら、整理し、改めて自分の現場や家庭で役立ててもらおうというのが、このセッションの目的です。

3分の話を聞いた後は、それをネタに7分間、メンバーでディスカッションします。すると、そこで起きている問題や課題がより明確化したり、あるいはメンバーの意見を聞くことで、発表者が事実をこれまでと違う視点から見られるようになったりします。参加前は「この3分間トークが不安で…」とおっしゃる方も時々いらっしゃるのですが、実際にやってみると、なんてことはない職場や家庭での雑談を、普段とは違うメンバーで行う感じで楽しいのですよ。



【セッション3】

セッション3は、ジェノグラムの演習とジェノグラムを使った事例検討が行われました。
ジェノグラムとは家族関係を図示するものですが、このワークショップで繰り返し学ぶ技術です。この技術を学び・使い・経験を積み重ねることで、

・ジェノグラムを見て、家族関係のバランス・アンバランスを感じ取ることができる
・バランス、アンバランスから具体的な援助プランを考えることができる

というメリットがあります。対人援助職者が携わる多くの問題は、「家族」というステージの上で起きています。不登校も、DV問題も、離婚問題も、養育放棄も、介護問題も、その多くに共通するステージとして、家族があります。そのため、援助の第一歩はまずステージの状況を正しくアセスメントすること、つまり家族の構造を理解することです。

インタビューの際にポイントになるのが、「境界・サブシステム・パワー」という三つの要素およびその機能状況です。例えば「パワー」とは家族の中で決めごとをするときに「誰が」「どのように」行っているかという決定のプロセスのことを指します。

問題を抱える家族においては、それら三つのファクターの何かが「一般的ではない」ことが多く、アセスメントにおいてはそれを「家族の特徴」と見なします。そして、その特徴が問題とされる事項になんらかの影響を与えていることが多いのです。

例えば、本来であれば夫婦で話し合って決めるべきことを上世代が決めてしまっているようなケース。子どもが行く小学校を、跡取り問題に紐づけておじいちゃんが決めました、などは一般的ではありません。それで上手く行っていれば何の問題もないのですが、仮にその経緯を踏まえて小学校に通っていた子どもが不登校になってしまったような場合は、不登校問題のように見えて、実はそうではないのかもしれません。

当事者にとっては「当たり前」になってしまっている「家族の特徴」を「一般的なそれ」に戻すことで家族というステージを整える。その結果、問題が解決に導かれることも案外多い。ざっくり言えば、これが「家族システムへの介入による解法」です。

今回は、ジェノグラムの書き方にフォーカスして演習が行われ、説明を聞いた後3人1組になり、インタビュアー、インタビュイー、観察者に分かれ対峙者の家族についてジェノグラムを描きながら話を聞いていきました。

そんなこんなで、あっという間の6時間。
今回も学びと笑いが絶えないワークショップでした。

次回v72は、2月10日土曜日に今回と同じ東京海洋大学 品川キャンパス 白鷹館で開催します。
専門職の方から、お母さん・お父さんまで、次回もたくさんの方のご参加を、お待ちしています!

※文中に出てくるケースや実例の内容等は、実際の講義と一部変更している場合があります

文責/団遊
【今回の参加者の職業・所属等(参加申込書より)】

社会福祉士、公務員、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、家庭裁判所職員、児童養護施設職員、スクールカウンセラー、福祉援助職、主婦、児童相談所、幼稚園園長、児童福祉士

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