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──アソブロックの「編集部立ち上げ支援」サービスについて伺いたいのですが、このサービスの立ち上げには代表の団さん自身は関わっていないんですよね?

団:はい。あれは、アソブロックのチーム制でいうところの安井さんチームが始めたもので。

──はじめてサービスの立ち上げを聞いたときは、どういう印象でしたか?

団:うまくパッケージングしたな、という(笑)。アソブロック的には従来からやっていた仕事ではあるけど、ああいうかたちでサービス化、パッケージ化して見せることではじめて人に伝わる面もあるというか、やっぱりそこが大事やないですか。

──「アソブロック的には従来からやっていた仕事」というのは具体的にはどういうことでしょうか?

団:たとえば、企業のWebサイトや会社案内を作るにしても、クレドみたいなので社内で理念共有するところから始まってみたりとか。「作って終わりじゃないよ」「作る過程で得た成長や、作ったことによってもたらされる変化と刺激こそがアソブロックの提供価値なんだよ」という。従来からアソブロックのモノづくりはそのスタンスなので。

僕がよく使う喩えでいうと、中国の故事からやけど「魚をあげるんじゃなくて、魚の獲り方を教える仕事をしなさい」ということを常々言い続けてきたので。

ただ、やってきたことではあるんだけど、事実として、やっぱりああいうかたちで「サービス」としてドンと見せた結果「へー、アソブロックさんそんなことも始めたんですね」って言われるわけですよ。

僕からしたら「いやいや、もともとやってきてたけど」みたいな(笑)。

でも結局、ああやってランディングページ作ってちゃんとリリースするっていうことで初めて利用イメージがわいてくれる人たちがやっぱり多いんやなということは、あらためて実感しましたね。

──「魚をあげるんじゃなくて、魚の獲り方を教える」という喩えを借りますと、でもたとえばメディア運営支援という切り口だと、お客さんのほうが手っ取り早く「魚」つまり記事の制作代行を依頼してくるケースも多いんじゃないですか?

団:それはもちろん、多いです。

──そういうニーズにはどう応えるんですか? もしくはお断りされているとか?

団:いや、別にやりませんということではなくて、判断基準としてはたとえばクライアントさんが見てはるビジョンがどうかだなと思っています。

僕の実務でいうと、たとえばDMMさんのオウンドメディア案件があるんですけど。それなんかは「社内で編集部を立ち上げろ/自走を目指せ」みたいなのって、ぜんぜん命題じゃないんです。

明らかにその先に実現しなければならないもっと大きなミッションがあって「我々としては全リソースをそっちの達成に注力したいから、編集部の日々の運用みたいなのは社内に専任者を置くメリットもないのでわるいけどまるごと請負というかたちでやってくれ」みたいなニーズが明確なわけです。それが共有されていれば、ああ、それはわかった、やりますわっていう。でも、一方であるとき僕らが倒産したときにどうしようってなるのは困るでしょうから、それはきちっとマニュアル化するのか、そういう事態にも備えて最低限の知っておかなあかんことは知っておきましょうねっていう塩梅のスタンスになりますね。

──かたや「編集部立ち上げ支援」の本旨でもある「魚の獲り方を教えてほしい」タイプのニーズについてですが、こちらについては団さん流のこだわりはどんなところにありますか?

団:相手の企業なり実際に接する担当者なりの「10年後のための仕事をする」ってことですかね。

で、それを実践するためのわかりやすい合言葉として「出入り禁止を恐れるな」ということはよく言ってます。「出禁上等!」です(笑)。

──えっと・・・ちょっと「10年後のため」と「出禁上等」のつながりがわからないのですが(笑)

団:つまり魚の獲り方を教えるにしても何にしても教育的なふるまいというのは、結果に気づいてもらうまでに時間がかかるものだということですよね。親の小言と一緒で。お父さんとお母さんに子供のころクソほど怒られたことって、まあ思春期を越えたくらいになってようやく、あぁそういう意味で怒られてたんかって気づくみたいな。

で、家族の場合は途中に反抗期が訪れようが基本的には家族であること自体に変わりはないけど、クライアントとの関係の場合、まぁ出入り禁止とまでいわずとも取引上お別れになることは別に普通にあることなので。なんか生意気やな、なんやねんあの会社は、とかなって。

せやけどやっぱり、取引がなくなることを恐れて言うべき事を言わないというのはよくない。なぜならアソブロックってやっぱり、根本は人材成長支援の会社なので。誰かの成長につながらないモノづくりなら、そもそも僕たちの介在価値はない。波風立てずクライアントさんの言うとおりに作って、結局、作る前のビジョンとか目的とかって達成できましたっけ?って議論になったときに「知りません、そこから先は運用の問題でしょ、うちは言う通りつくったじゃん」みたいなスタンスって、そっちのほうが結果としては失礼な話だと僕は思っているので。

──なるほど。一方で団さんは経営者でもあるわけで。取引がなくなるかもということに対しての恐怖みたいなものは本当に全然ないんですか?

団:うーん。でもね、これがおもしろいことに、一度物別れになったクライアントさんから10年くらいしてまた相談の電話きたりするんです。

10年かかってわかった、10年前のあのときは、アソブロックのだれだれさんあんだけ偉そうにって俺は思ったけど、今思えばアソブロックの言うとおりだった、とか。

別に損して得取れとまでいうつもりはないけど、結果としてそういうことが起きたりするもんだなと思うし、それがやっぱり大事だな、仕事としての正しいありかただなって思います。

──ちなみに、実際に「出入り禁止」を食らった案件ってあるんですか。

団:結構ありますよ(笑)。たとえば、なんやろ。某県の工務店さんの話とか。

その会社さんは、僕に相談がくる少し前から、自社のWebサイトをオウンドメディア化してはって。で、そのメディアのいわゆるKPIというか目的としては単純にいうと「家を建ててくれそうなお客さんを集める」ってことなんですけど。そのためにメディアを安定軌道に乗せて、次は冊子も作るぞみたいなことで、まあ、最初は景気良くプロジェクトが始まったわけなんですけど。付き合っているうちに、この会社のいちばんの成長阻害要因は、社長だなって思ったんです。この社長が変化しないと、会社も変わらないなと。人の紹介で行った案件だったから、その紹介してくれた人の手前そんなにすぐ喧嘩するわけにもいかへんのやけど。

まあけどやっぱりクライアントの組織の課題って、制作過程で如実に見えることってあって。その工務店さんの場合は、いつも打ち合わせの最後の15分だけ社長が出てきて、それまで1時間話し合ってきたことを、ちゃぶ台ひっくり返していくっていうパターンが毎回なんですよ。「それって本当にいいのかな、よく考えたの?」みたいなことを言ってね。

こっちからしたら、じゃあ、なぜ1時間前からいなかったのかと思うわけですけど、そんな状況に対して、そこにいるメンバーも誰ひとり社長に反論しないんですよ。ああ、そうか、社長のいうことももっともだし、もう一回考えよかみたいな空気になんとなくまとまって、それでなんか・・・こっちに目線くるわけ。付き合えよ、みたいな(笑)。

──無言のプレッシャー(笑)。

団:これがなんか、この会社のすべてだなと。これはあかんなと思って。それで、まぁ社長、ちょっと一度御飯でも食べに行きませんかみたいに誘いまして。

ちょっと言葉が過ぎるんですけど、オブラートにつつんでもよくないし、僕ときどき偉そうやってめっちゃ怒られるんですけど、とか、自分なりには相手に怒られない伝え方とか前置きっていうのはそれなりにいろいろ持っているほうなので、そのなかで相手によって一番フィットしそうな言い方をするんだけど。

ところがまあどうしたって言われたほうはあまり気分のいいことじゃないし。やっぱ怒る人は怒るんですよね。で、その工務店の社長は、性格は先進的なサバけた人ではあったんですけど、結果としては怒らはって。お前に何がわかるんだ、みたいなことですよね。

いやでもお前に何がわかるって、わかるんですよ、社員が萎縮しているってことは。みたいな。あんなんおかしくないですか、みんな黙ってるし。と。

しかも、やってることと言うてはることと相反していて。たとえば「俺はワンマン経営だから俺の言ってることについてこい、俺が絶対なんだ、俺は神なんだ、お前たちわかったか!」って普段から言ってる人であれば、首尾一貫していて僕もそれでいいんだけど。ところが、そうは言ってなくて。「みんなで決めなよ」「俺はいるとどうしても口出しちゃうからさ、任せるよ!」みたいな。

そう言っておいて、会議の最後に「どうだ~?」って、気のいいおじさんの顔をして入ってきて、結果、ひっくり返して。

こういう内情で社員が萎えてしまっているような会社なのに、我々がいい感じの部分だけフォーカスして伝えたものをつくったとして、もしそれをきっかけに家を建てるお客さんが釣れてしまったら可哀想やなと思ったんですよ。それは基本どんな案件でも思うことですね、こんな幼稚園入れたら最悪やなとおもう幼稚園は、やっぱりホームページ作りたくないし。なんか自分も悪の一味の片棒かついだみたいな気分になるじゃないですか。

──そういう話を社長さんにお伝えしたと。すごい空気になりそうですね・・・。

団:うん、でもそれは結局、社長も大人だしひとかどの人だから、そのときは、すごい勉強になったよみたいな。君みたいに有望な人ははじめてあった、とか。直接言ってくれてありがとう、俺も天狗になってたところもあるから申し訳ないと思う、とか、そういうやりとりもあった上で、でも俺のこともわかってほしいんだけど、みたいな。君にわからないことだっていっぱいあるよ、みたいな感じでしたね。

まあそもそもが飲みながらやから、怒ってるときと、すごい感謝のときと、よくわからんバランスで。最初僕は15分言いたいこと言った後、残り1時間半くらい相手の言うことひたすら聞くっていう感じになり、それで終わりました。

帰って、翌々日くらいに、担当窓口の主任さんから「団さんすみません、今回の件は色んな事情があって、いったんストップにさせてもらいたい」っていう連絡がくるわけなんです。はい、晴れて出入り禁止です(笑)。

でも僕としては、そのタイミングで主任に、ああそうですか、実はもう聞いてはるかもしれませんけど、おととい実はこれこれこういうことを社長に申し上げまして、と、ちゃんと言うわけですよね。その人たちにとっては、せっかく積み上がってきた議論が棚上げになってしまうことではあるので。

で、さらに主任に向けて続けるわけです。僕は思うんですけど、やっぱりみなさんの仕事のスタンスも、ああやって社長が右って言ったら突然右にっていうのを周りの業者さんにも強要していたら、工務店としての協力会社さんとかにもいつかそっぽ向かれるかもしれんし。そこはやっぱり客観的にみたら、御社の弱みなので。そこは主任、あなたも、まあ別に社長と対決しろとまでは言わないしあなたにはあなたの事情もあるし家庭もあるやろうから、喧嘩する必要はないけど、でもちょっとずつ変えていかないと、やっぱり長い目で見るとすごいリスクの積み重ねにしか見えないですよ、と。

その途中において僕に何かできることがあったら、社長は僕にはもう二度と会いたくないでしょうけど、みなさんと一緒に時間を積み重ねたことには意味があるので、いつでも声かけてくれはったら、まあ御社にいったら怒られるから、外の喫茶店でも相談のりますよとか(笑)。

そしたら、向こうの人も、それは本当にうちの弱みでっていうのはわかってるわけですよね。言われるまでもなく。でもずっとこれできていてとか、実は今までにもこうやってプロジェクトが倒れるケースがあってとか、話が出てくるわけですよね。

で、当然、どういうふうにしたら変えていけますかねみたいな、そこは聞いてくれますやんか。やっぱりその主任は主任で、プロセス運びが下手だったりもするから。そういうワンマン社長に、従属するのが、彼のなかの染み付いたパターンになってしまってるから。それが良くなくて。周りの部下たちもその姿を見ているから、主任もリスペクトされてないんですよ。それも見ていてわかるわけです。そこはこういうふうにしたほうがいいんじゃないですかとか、ちょっとずつできることからでいいんですけどね、ってアドバイスさせてもらって。

そんな感じだから、まあ僕のなかでは喧嘩別れは喧嘩別れで、出入り禁止でもあるんですけど。といって別にネガティブな話ではないわけなんですよ。

──そう、なんですかね(笑)

団:あ、でも「編集部立ち上げ支援」サービスの契約者さんとの間では、今のところ出入り禁止って話はないはずですよ。それはもともとサービスの内容に教育的なふるまいが含まれていることが明示的やし、むしろそこに期待をしてオーダーをいただくことが前提になっているからでしょうね。

そういう意味でも、やっぱりうまくパッケージングしよったな、と(笑)。そう思いますよね。

 

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