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オウンドメディア編集にも役立つ「演出家の目線」とは?

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アソブロックのプロデューサーである傍ら、演劇の世界で演出家や演技トレーナーとしても活躍する林洋平。インタビュー第2回は意外と知らない「演出家」の仕事内容と、コンテンツ編集にも役立つ演出家の目線について探る。

聞き手:魁生 佳余子(フリーライター)



脚本の世界を3D化し舞台全体の指揮を行うのが演出家


―演出家ってよく聞くけれど、具体的にはどのようなことをしているのか、実はよく知らない人は多いと思います。また、林さんは演技トレーナーもやっていますよね。演劇の世界にはどんな役割の人がいて、何がどう違うのか教えてください。

林:演出家の仕事というのは簡単にいうと、物語を3Dにして立ち上げる作業です。台本に描かれた文字情報からその世界全体の絵づくり、イメージづくりをする人といえばいいのかな。脚本、俳優、美術、音楽、照明、衣装などさまざまな役割の人たちが舞台を構成しますが、これらを統括してどんな風に俳優を動かして、どのタイミングでどこに向かってセリフを言い、舞台装置や衣装はこんなイメージで…といったように、演出家は舞台全体を見て指揮(=direction)をする役割だと、僕個人は捉えています。



―演出家の他に「舞台監督」という人もいるようですが、どう違うのでしょう?

林:演出家との違いとして、わかりやすく極端にいうと舞台監督は芝居の内容そのものにはタッチしないんです。舞台監督は劇場に入ってからの舞台上の進行管理が主な役割です。上演中に芝居が滞りなくかつ安全に進むよう、いつどのタイミングでどこから役者が出るとか、大道具を移動するかとか、そういった物理的な進行管理を担います。



―そうなんですか!名前を聞くだけでは具体的な仕事ってわからないものですね。演技トレーナーというのは?

林:これは、実は日本ではまだあまり一般になじみがない役割というか、私がやり始めたのがちょうど黎明期というような仕事といえるかもしれないですね。



―それは興味深いです。具体的には?

林:演技トレーナーというのは、俳優に演技のヒントを与えるような役割です。私が実際に関わっている例でいうと2.5次元ミュージカル『テニスの王子様』は今や若手俳優の登竜門的な舞台とも言われているのですが、演技経験の浅い俳優も多いので、演出家や演出助手の言ったことをすべて理解できないこともあるし、公演が長いと途中で演技に迷いが生じることもあります。そうしたときに演出意図を噛み砕いて伝え、「こういう情景を想像してやってみたら?」とヒントを与えて導くような仕事です。海外ではアクティングコーチという役割が存在していて、演技指導をするのは一般的なことですが、日本だと私を含めてまだ稀な存在かもしれません。演出家は一度舞台が仕上がれば上演中の公演には基本的に関わりません。演出助手が途中で手直しをすることはありますが。でも私は可能な範囲で公演に帯同してアドバイスを行っていきます。舞台はよく生き物に例えられますが、毎回毎回違うものなので、近くで様子を見て助言することは必要な作業なんです。



見せ方が違えば伝わり方も違う。演出と編集の共通目線

―演出家の仕事の話に戻ってしまうのですが、素材をもとに表現したい世界の絵作り、イメージづくりをするのが演出家だとすると、やはりコンテンツの企画制作を行う編集の作業に似ている気がします。

林:素材の見せ方を考えるという部分は共通するところはありますね。コンテンツが結局のところ「編集で決まる」のと同じように、演劇も同じ素材を扱っても演出家次第でまったく違った印象の舞台になります。『ロミオとジュリエット』のような古典の名作を見比べてみると、演出家次第で別物になるということが実際によくわかると思います。



―同じ物語、同じセリフでも見せ方次第で違うものになると。

林:ぜんぜん違いますね。細かい演出技法の話でいえば、たとえば同じセリフでも客席に向かってしゃべらせるのか、客席に背中を見せて舞台奥に向かってしゃべらせるのかで、与える印象はまったく異なると思います。観客がどういうイメージを受け取るか、またどういうイメージを抱いて欲しいのか、演出家は意図を持ってそれぞれ見せ方を考えています。



―意図をもって素材の見せ方、伝え方を考えるというのが、非常に「編集」的ですね。

林: そうですね。届けたい層に伝えたいことをきちんと伝えるためには、コンテンツ制作でもこうした演出家目線は必要だと思います。見る人は誰なのか、見せ方によって与える効果はどのようなものなのか、それを常に念頭に置いておくことができれば、狙ったことが伝わるものを作れると思いますよ。



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