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受注に貢献するオウンドメディアの作り方。編集者・阿部俊介に聞くこれからのコンテンツマーケティングとは?(後編)

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アソブロックのマーケティング担当でもあり、常時50社以上の企業のマーケティング支援やコンテンツ制作支援を手がけてもいる編集者・阿部俊介。彼は、商品ではなく人をアピールする“オウンドメディア2.0”を提案する。前編に続く後半では、その背景や「人を売る」記事をつくるためのノウハウを聞いた。

 

他社との違いを最もアピールできるのは“人”

―これからのオウンドメディアは「商品」ではなく「人」をアピールすべき。そんな“オウンドメディア2.0”構想は、どんな背景に基づいて生まれたんでしょうか。

アソブロックにも『あ総研』というオウンドメディアがあります。このサイトのことですけど。2014年ごろからはじめて、時期によってムラはあるけれど、実験的な取り組み含め細々と更新を続けてきました。昔は、アソブロックが手がけることの多い新卒採用支援案件とつなげて「内定承諾率の平均は?」みたいな人事お役立ち記事をつくったり、はたまた「結婚式で流したい!入場曲・BGMにおすすめ洋楽10選」みたいなエンタメ系コラムを公開したりしていて。そういう記事をフックに会社の存在を認知してもらって、少しずつ問い合わせをいただくような仕立てでした。

 

―オウンドメディアとしては、オーソドックスなやり方ですよね。

はい。でもここ最近は、ぐっと方向性を変えて、アソブロックのメンバーにフォーカスするコンテンツを増やしました。たとえば「難関取材先の口説き方とは? 編集者 林洋平のテクニック」など、メンバーとその得意分野をアピールするようなインタビュー記事です。その結果まず表れた成果として、既存顧客からのリピート発注が目に見えて増えました。ひさしぶりのお客さんから「あの記事見ましたよ、林さん」と登場しているメンバーに連絡がきたりして……。コンテンツに“人”を出すことで、会社への好感度があがったり、心理的な距離が縮まったのではという手応えを感じるようになり、そしてその経験から、これからのオウンドメディアが提供していくべきコンテンツ設計の糸口を掴めたように思いました。

 

―確かにその会社の“人”が出ている記事は「こういう人がいる会社なんだなぁ」「この人がこんなふうに仕事してるんだ」という具体的なイメージがわくし、記憶にも残りやすいでしょうね 。

「ザイオンス効果」という心理学用語があって、同じ人やものに接する回数が増えれば増えるほど、人はその対象に対して好印象を抱くようになるそうです。要は、オウンドメディアによってその人なり会社なりを見聞きしたような錯覚を与えられていれば、実際に問い合わせをいただくその時点で既に競合よりも一歩先に行けるはず、ということです。そのあと商談で対面した際に 「どっかで見たことあるな」「あ、あの記事に出てた人だ」と思ってもらえたら、それだけでもザイオンス効果が期待できるし、肩書きのある人ならさらに強くて「メディアに出まくっている、あの○○さんが担当してくれるんだ!」というふうに、最初からかなり優位な状態で商談をスタートできます。 商品や情報で差別化しにくくなっているいま、他社との違いをアピールするのは“人”なんです。世の中のビジネスが“物の売り買い”から“ソリューションの売り買い”に拡大してきたように、次は“関係性の売り買い”がキモになっていくんじゃないかな……というのが僕の個人的な予想だったりもします。

 

 

営業の客先トークを記事化するだけでもいい

―オウンドメディア2.0として“人”を出すメリットは、自社の人材を成長させる効果もありそうですね。ある意味で“タレント化”というか。そして、タレント化した人材が、他社と差をつけるポイントになっていく。

そのとおりです。人を出す=有名人やインフルエンサーを使おうぜ、ってことじゃない。どっちかと言えば、社内の人間を有名人やインフルエンサーにしちゃおうぜっていう話です。

 

―でも、社員の顔や名前を出すことに及び腰の企業も少なくないですよね? 個人情報だからさらしたくない、という。

そうですね。個人情報だから怖いとかもそうですが、日本人的な恥じらいとか謙虚さも障壁になりえます。あと、メディア露出によって個人のキャリアに箔がつくことで、会社側からしたら人材の流出につながると危惧されることも。でもそのへんの抵抗感については、うまく切り替えたいところ。結局どの会社だって本来、他社がほしがるくらいの人材を育てていかないとダメなんですから(笑)。

 

―どうしたらそうした抵抗感は解消できるんでしょうね。

まずは当たり前ですけど、メリットのほうに目を向けることですよね。自社メディアとはいえ露出することで社員の権威が高まれば、営業活動にはいい影響が出るに決まっています。「うちの担当の○○さん、ぺーぺーかと思ってたけど結構エースなのかな?」と思ってもらうくらいのことでも、かなり違うと思うんです。人選というと、ついつい部長や社長みたいにもう結果を残している人を出したくなるけれど、なるべく、これから伸ばしたい人材を中心に選ぶといいですね。それは、自社メディアだからこそできる訴求です。

 

―でも、これからのポテンシャルで選ばれた人は、ちゃんと記事になるほどのことを話せるんでしょうか。コンテンツそのものが成り立つのか、不安になりそう。

そういう意味では、何も突飛なことはしなくたっていいんですよ。最終的に売りたい商品やサービスに対して、どんなアプローチの記事があればユーザーと紐づけられるか、を考える。あくまで、その味つけに人を出すだけなんです。出るほうも、特別なことを話す必要はありません。たとえば営業マンなら、普段の商談でどんなことを話しているのかを再現するだけだっていい。「〇〇さんの人生観とは…?」なんて大げさな記事をつくらなくても、訴求したい商品と人の特長が伝われば充分だと思います。マーケティング担当者はコンテンツの中身や作り方に頭を悩ませるけれど、エースの営業マンが客先で話していることを記事化するだけで案外いいものができあがるというのは、私もよくお伝えするノウハウのひとつです。

 


アソブロックの「編集部立ち上げ支援サービス」では、効果的なコンテンツ制作のノウハウ提供や、継続的に情報発信するための体制整備のお手伝いをしています。メディア運営で悩みを抱えている方は、お気軽にご相談ください。

 

 

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